〆三さるる舎 改修工事
用途 :宿泊施設(簡易宿所)
構造 :木造平屋建て
設計 :(株)鈴木理アトリエ一級建築士事務所+ナカノ設計店
施工 :分離発注
お世話になった皆様(敬略称)
・あかりさん
・信ちゃんリホーム
・杉本塗装店
・川原田建具
・小島電機
・伊藤建材
・澪工房
・ノースプレインファームの皆様 他
道東のオホーツク海沿岸に位置する興部町沙留地区。漁港を見下ろす緩やかな坂の中腹に佇む築50年の木造平屋の改修プロジェクトです。
丁寧に住み継がれてきた大伯母の家を受け継いだ施主は、観光需要が乏しい故郷に、訪れる人々が心地よく過ごせる場所を望みました。単なる観光施設ではなく、一次産業とともにある泥臭く美しいオホーツクの暮らしを、豊かな食材と温かい人々との出会いを通じて体感できる場所を目指しています。
「豊かな過疎」というコンセプトのもと、私たちは既存建物の持つ記憶を大切にしながら、新しい価値を重ねていく改修を計画しました。区切られていたリビングとダイニングキッチンをワンルームとして開放し、魚を捌ける本格的な業務用キッチンを設置。小さな空間でも、椅子に座り、ベンチに腰掛け、あるいは床に寝そべるなど、思い思いの方法でくつろげる場となるよう配慮しています。
古いものと新しいもの、工業的な要素と手触りの感じられる素材を織り交ぜ、過去と現在が共存する豊かな環境を目指しました。既存の要素を単に取り除くのではなく、新たな「設え」を足していくことで、建物の記憶を受け継ぎながら、現代的な価値や過ごし方を提案しています。
本計画では、昨今の建設費高騰を考慮し、工事を分離発注としました。これは単なるコスト削減策ではなく、新築時からこの住宅に携わった大工、施主の友人のご兄弟である設備屋、ご友人である建具屋、そして同郷である札幌の家具屋さんなど、施主とゆかりのある方々の手によって改修工事が進められています。この工事体制自体が、人々のつながりを大切にする地域の特性を体現しているといえます。
これは、オホーツクの地で紡がれてきた暮らしの記憶と人々の絆を大切に受け継ぎながら、悲観的ではない新たな物語を紡ぎだすための一つの試みです。










HISTORY

約50年前、〆三横田漁業部時代の道具。 玄関ドア把手として再利用。

約50年前、〆三横田漁業部時代の道具。 内部ドア把手として再利用。

キッチン側を見る。 改修工事では中間の壁と暖炉造作を撤去し、ワンルームに改修。

約50年前、〆三横田漁業部時代の道具。 玄関ドア把手として再利用。